今では不治の病ではありません HIV・エイズの話(第3回)

今では不治の病ではありません HIV・エイズの話(第3回)

エイズ患者に特有な日和見感染症とは

HIV・エイズの3回目はエイズ患者にみられる日和見感染症について解説します。

前回、HIVに感染するとCD4陽性細胞と呼ばれるリンパ球の数が減ってくることをお話ししましたが、このCD4陽性細胞はいわゆる免疫にとって大切な働きをします。

その働きがなくなると免疫不全の状態になって、健康な人であれば感染しないような微生物が感染します。

このような感染症を日和見感染症と呼びます。

エイズ患者ではこのCD4の数によって、感染する微生物がある程度決まってきます。

まず、CD4陽性細胞数がそれほど少なくない時期には、カンジダと呼ばれるカビ(真菌)が感染します。

このカンジダは健康な人の体の中にいますが、このカンジダが口の中で感染症を起こします。

口腔カンジダ症と呼ばれる病気で、喉や舌に白いぶつぶつが見られるようになります。

このような患者さんは、病院でなく、歯科医院に行くことが多く、エイズ患者が歯医者さんで発見されることもあります。

さらにCD4陽性細胞数の数が少なくなると、次にニューモシスチス肺炎と呼ばれる肺炎が起きます。

このニューモシスチスも人の体の中に生息する微生物ですが、健康な人では肺炎を起こすことはありません。

エイズ患者では、このニューモシスチス肺炎によって、ある日突然息苦しくなって、救急車で運ばれることになります。

この肺炎はレントゲンで特有な影を示すので、その影を見たお医者さんがHIVの検査をして発見されることがあります。

このようにして発見されるエイズ患者をいきなりエイズと呼ばれたりします。

さらにCD4陽性細胞数が少なくなると、クリプトコックス髄膜炎という感染症が起きます。

これは、クリプトコックスと呼ばれるかび(真菌)による感染症です。

この感染症は脳の周りの髄膜に感染するため、時には命に関わる重症の感染症となることもあります。

このほかにも、サイトメガロウイルストキソプラズマなどさまざまな微生物が日和見感染症を起こします。

これらの日和見感染症はエイズ患者に特有であり、患者発見のきっかけになります。

次回の最終回では、エイズの薬について解説します。

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