蚊に刺されて痒いだけならいいのですが。
歴史も変えるマラリア
暑い日が続いいていますが、今月はあの耳元でブンブンと煩い蚊に咬まれて起こる感染症の話題です。
日本では死亡原因の上位と言えば、癌などの悪性腫瘍、心臓の病気、肺炎などの呼吸器の病気になりますが、
世界全体から見てみると死亡原因の上位にマラリアが入っています。
マラリアはマラリア原虫と呼ばれる病原体で起こる感染症です。
実はこのマラリアが世界的に見るといま大変なことになっています。
一つはマラリアの中でも死亡率が高い熱帯熱マラリアが世界中で流行しています。
そとれともう一つはこれまでのマラリアの治療薬が効かなくなってしまった耐性マラリアが蔓延しています。
つまり、たちが悪くて、治りにくいマラリアが大流行しているということです。
これは、世界保健機構(WHO)でも人類にとって大きな危機であると言っています。
先日、アフリカ大陸の横にあるマダガスカルに仕事で行ったとき、
飛行機がまさに離陸する直前に、大男のキャビンアテンダントが両手に殺虫剤をもって、座席上の荷物置き場に散布して、前後に歩いていきました。
日本から離陸する飛行機にはいらないんじゃと思いましたが。
そして、マダガスカルの首都アンタナナリボに着きました。
多くのアフリカの大都市は標高がかなり高いところにあります。
これは、マラリアを感染させる蚊から守るための知恵なのです。
ということは、標高が低い海岸ほど危険ということです。
明治時代に日露戦争であの最強のバルチック艦隊がマダガスカルの港に寄港したそうです。
そこで、多くの船乗りがマラリアに感染し、大打撃を受けたまま、日本海海戦となりました。
東郷平八郎の強い味方は実は蚊でした。
蜂の一刺しならぬ、蚊の一咬みが歴史を変えたのかも知れません。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症