感染症の小部屋にかわるシリーズとして、今回から感染症カルタが始まります。
このコラムではアイウエオ順に名前の付いた感染症についてできるだけわかりやすく解説していきます。
では、ア行の第1回目はアニサキス症について解説します。
アニサキス症はアニサキスと呼ばれる寄生虫による感染症です。
アニサキス症は皆さんが大好きなお寿司やお刺身などになった海のものを食べることによって起こります。
おそらく昔から病気はあったと思いますが、正式にアニサキスと呼ばれる寄生虫による病気とわかったのは1960年代以降のことです。
その後、胃カメラによる検査が普及してから、このアニサキス症がたくさん発見されることになりました。
最近では1年間に7,000~8,000人くらいの患者さんが発見されています。
このアニサキスは、サバやアジ、イワシ、いかなど皆さんが普通に食べている魚の中にいます。
最近ではサンマを食べてアニサキス症になる人も多くなってきました。
このアニサキスと呼ばれる寄生虫は糸くずのような形をした線虫と呼ばれています。
出典:国立感染症研究所ホームページ
(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html)
左上:スケトウダラの肝臓に寄生するアニサキスの幼虫(リング状のもの).
左下:スケトウダラから取り出したアニサキスの幼虫.
右上:サバの身に寄生するアニサキスの幼虫(→)(肉眼で確認するのは容易ではない)
右下:顕微鏡でみたアニサキスの幼虫
この寄生虫をお魚と一緒に人が食べることによって感染します。
症状はこれらの魚を食べてから数時間後にお腹がとても痛くなって、時には吐き気や実際に吐いたりします。
私はアニサキス症になったことはありませんが、患者さんの話を聞くとお腹が痛くて、のたうちまわるほどとのことです。
診断は胃カメラをして、胃の壁に噛みついているアニサキスを発見することによってできます。
発見したら鉗子と呼ばれる道具を使ってこの虫を胃の中から取り除いてやります。
出典:国立感染症研究所ホームページ
(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/314-anisakis-intro.html)
左:胃の壁に食いつくアニサキスの幼虫
右:鉗子と呼ばれる道具でアニサキスの幼虫を取り出す
アニサキス症にならないためには、できるだけ生でお魚を食べないことです。
60℃以上で1分間以上、加熱するか、-20℃で24時間以上冷凍したお魚を食べるようにして下さい。
もし、このような処置をしていないお魚を生で食べて、お腹が痛くなったら病院に行って、先生にアニサキスかもしれませんと話してください。
新鮮なお魚ほど美味しいものはありませんが、アニサキスには要注意。
次回、ア行の2回目はアメーバ赤痢を取り上げます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症