災害時の避難所でインフルエンザなどの感染症が拡大するのを防ぐため、日本環境感染学会は、47都道府県に感染症の専門家チームを立ち上げる方針だ。東日本大震災の被災地でも活動した櫻井 滋岩手医科大教授は「集団生活では特別な知識と対策が必要。全国でリーダーを育てたい」と意義を話す。2019年5月7日 (火)配信共同通信社
大変素晴らしい取り組みです。これまで、災害時には命を守る医療チームはありましたが、感染症の予防もとても重要です。我が国はどこで災害が起きるかわかりませんので、すべての都道府県でこのような医療チームが整備されることを望みます。
Q. 災害時にはどのような感染症に注意が必要ですか。
A. 多くの人が狭い同じ空間で生活するため、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症に特に注意が必要です。
災害時には多くの人が避難所で生活することになるため、集団感染しやすいインフルエンザやノロウイルスに特に注意が必要です。また、避難所は多くの場合、室温や空調の管理が不十分なため、一般の社会よりも感染が広がりやすい環境になります。
Q. なぜ、災害時には集団感染が起きやすくなるのですか?
A. 避難所での集団生活以外にも、栄養や睡眠など数多くのストレスがかかり、感染しやくすなります。
環境の要因以外にも、避難所ではバランスの良い食事がとれないため、栄養状態が悪くなり、免疫力が低下します。また、プライバシーが保てないことから、十分な睡眠がとれずに、やはり免疫力が低下して感染症にかかりやすくなります。
Q. 災害時の感染対策で最も気を付けることは何ですか?
A. 一番大切なことはやはり手洗いになります。
多くの感染症は環境に生息する原因微生物が手について、それから人の体の中に入ってきます。そのため、普段以上に手洗いが大切になります。しかし、避難所では十分な水を使えないことや、手洗いをする場所が限られているなどの理由で手洗いが不十分になります。その場合は、アルコールを手に付けるだけでもある程度の消毒効果はありますので、もしアルコールの消毒液が用意されているときには、それを使って手の消毒をしてください。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症