天然痘はどんな病気
天然痘は天然痘ウイルスによる感染症です。
紀元前から天然痘と思われる病気の記載があり、歴史的にも長い間人類を苦しめてきました。
1796年に英国の医師であるジェンナーが天然痘の予防法として種痘(vaccine)を発明しました。
ワクチンという言葉はこの種痘(vaccine)から来ています。
このワクチンが全世界の人に接種され、1980年5月にWHOは世界根絶宣言を出しました。
それ以降、世界中で天然痘の患者は発生していません。
日本における天然痘
日本には奈良時代に中国から天然痘ウイルスが入って来たと考えられています。
その後、日本でも流行し、多くの人が天然痘で命を失いました。
あの東大寺の大仏は天然痘の流行が鎮まることを祈って建立されたとのことです。
その後、江戸時代に日本でも種痘が接種されるようになり、患者数は激減しました。
そして、1980年(昭和55年)に天然痘のワクチン接種も廃止されました。
根絶された天然痘になぜ治療薬が
世界中から根絶された天然痘になぜ薬が必要なのでしょう。
それは天然痘ウイルスがバイオテロ(生物兵器)として使われる危険性があるからです。
天然痘の死亡率は20~50%と高く、感染すれば多くの人が死んでしまいます。
しかも、ワクチン(種痘)を接種していない若い人に感染します。
また、特徴的な皮疹は見た目にもグロテスクで、社会にパニックを起こします。
さらに、この生物兵器は安価に作ることができるため、経済的に決して豊かではない国でも作ることができます。
今回は、天然痘と似たウイルスであるサル痘の感染を防ぐために、天然痘のワクチンを医療従事者に接種することが検討されています。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症