[感染症キャッチアップ]英国から報告されたサル痘について解説します

新型コロナウイルス感染症の患者数も心配されていた大型連休の後の急増もなく、一部の地域を除いては減少傾向がみられています。そう思いきや今度は「サル痘」の患者が欧米を中心に報告されWHOや厚生労働省からも注意喚起がされています。そこで今回は「サル痘」について、先日、英国から報告されたレポート(https://doi.org/10.1016/S1473-3099(22)00228-6)をもとに解説したいと思います。

サル痘のどんな病気か
サル痘はサル痘ウイルス(monkeypox virus)の感染によるウイルス感染症です。

出典:国立感染症研究所ホームページ

(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/408-monkeypox-intro.html)

サル痘ウイルスはウイスル学的には天然痘ウイルスに近い仲間になります。1970年に中央アフリカから初めて報告されました。本来は猿に感染するウイルスですが、ヒトに感染すると、発熱、皮疹、リンパ節腫脹などの症状が認められ、肺炎や脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがあります。致死率は1~⒑%程度と言われていますが、この数値は医療が未熟な発展途上国での結果であり、正確な致死率とはいい難い面もあります。ヒトからヒトへの感染も報告されており、院内感染や家族内感染の事例もあります。

英国から報告された7例のサル痘
今回、英国から2018年から2021年までに診断された7例のサル痘の患者が報告されました。男性が4例、女性が3例で、年齢は1例の乳児を除き、すべて30~40代の成人でした。4例はナイジェリアで感染し、3例は英国国内での感染例でした。全例で天然痘ワクチンは未接種、3例が熱で、1例は全身倦怠感で発症していました。⒑~150個の皮疹が顔面、体幹、手のひら、下腿などに認められていました。

出典:Lancet Infectious Diseases

(https://doi.org/10.1016/S1473-3099(22)00228-6)

また、5例にリンパ節腫脹を認めていました。咽頭拭い液から全例でサル痘ウイルスのDNAが検出されていました。入院期間は⒑~39日で、すべての患者は回復して退院しています。

サル痘の治療は
サル痘ウイルスに関しては現時点で有効が確認された抗ウイルス薬はありません。しかし、今回の英国の症例では天然痘ウイルスに有効と考えられている抗ウイルス薬であるbrincidofovirとtecovirimatが投与されています。実はこの2つ薬剤は天然痘がバイオテロとして使用された場合の治療薬として開発されてきました。もちろん現時点で天然痘は撲滅された感染症のため、人における臨床試験は実施されていませんが、動物実験ではその有効が確認されています。今回の英国の症例では3例にbrincidofovirが、1例にtecovirimatが投与されています。用法・用量はヒトでは確立されていませんが、brincidofovirは200㎎、tecovirimatは600㎎が1日量として投与されています。いずれの薬剤でも、ウイルス量の減少や症状の改善を認めていますが、残念ながらbrincidofovirが投与された3例ではすべて副作用と思われる肝機能障害を認めました。Tecovirimatの投与例は特に副作用を認めていませんでした。また、今回の報告では、約3週間はサル痘ウイルスのPCR反応が陽性となることが判り、予想以上にウイルスが長期間存在することから今後の感染対策の上で十分考慮が必要とされています。

先日、いつも犬の散歩に行く、近くのお寺の境内で猿回しの余興をやっていました。

犬と猿は犬猿の仲とされ、仲が悪いと言われていますが、犬は吠えることなく、猿も暴れ出すことなく何も起きませんでした。案外、犬と猿は仲がいいのかもしれません。そういえば、桃太郎と一緒に鬼退治に行ったのも犬と猿と雉でしたね。

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