【感染症キャッチアップ】ダニ媒介感染症を先取ろう!

心地よい季節を好む感染症

関東では満開の桜もほぼほぼ散り始めて、また来年のお楽しみになりました。今年はお花見の際の行動制限もかなり緩和され、皆さまも桜を楽しまれたことと思います。新型コロナも来月には感染症法の分類が5類になることから、これまでの社会生活の制限は、ますますなくなることと思います。これから初夏の心地よい季節を迎え、外に出かけて、すがすがしい空気を胸いっぱいに吸い込みたいと思われる方も多いと思います。今回は、そのようなときにちょっと注意が必要なダニが媒介する感染症をキャッチアップしてみます。

“つつがなくお過ごしですか”のツツガムシ

ツツガムシ病はダニの1種であるツツガムシによって、Orientia tsutsugamushiと呼ばれるリケッチア属細菌に類似した菌株が感染する病気です。昔からあるツツガムシ病は、山形県、秋田県、新潟県などの地域の河川敷でダニに咬まれて感染する風土病(日本河熱)でした。

多くは、初夏から真夏にかけて患者さんが発生していました。これらの地域ではツツガムシに咬まれないで健康に過ごすことを「ツツガムシがない」から、「つつがなく(恙なく)」と呼ばれ、健康に過ごすことの語源となっています。ツツガムシ病は発熱、発疹、刺し口が主な3徴候と呼ばれ、患者さんの9割にこのような徴候があることから診断されます。現在はツツガムシ以外のダニから感染することも多く、北海道から沖縄まで日本全国で患者さんが発生しています。

秋田県は21日、青森県の80代女性が、ダニの一種であるツツガムシの幼虫に刺されて発症するつつが虫病に感染し、死亡したと発表した。2019年5【続く】

ダニが媒介するもう1つのリケッチア症

もう1つ注意したいダニが媒介するリケッチアの感染症が、日本紅斑熱です。原因は、まさに日本のリケッチアと命名されたRickettsia japonicaと呼ばれるリケッチアです。媒介するダニは、マダニの1種で、初夏から真夏を中心に患者さんが発生しています。

これまでは、温暖な気候の太平洋側の地域で患者発生が多くありましたが、次第に日本全国に広がりました。北関東から北海道までの地域では発生はありませんが、埼玉県でも患者さんが発生しています。ツツガムシ病と同じように発熱、発疹、刺し口が主な3徴候とされますが、潜伏期間がやや短いこと以外には鑑別は困難です。ツツガムシ病と同様に治療にはテトラサイクリン系薬か、キノロン系薬が有効ですが、ツツガムシ病よりやや重症となる症例が多いことから、早期の適切な治療が重要です。

ダニからだけではない! ペットからの感染も

さらにもう1つ、ダニが媒介する感染症として最近話題となっているのが、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)です。SFTSは、マダニが媒介するブニヤウイルスと呼ばれるウイルス感染症です。このウイルスは、2011年に中国で初めて報告されて、その後日本や韓国でも発見されました。鹿児島県や宮崎県など、南九州を中心に多くの患者さんが発生しています。

今日の新着記事熊本県は28日、マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染者が急増しているとして、注意を呼び掛けた。SFT【続く】

感染すると、6日~2週間の潜伏期間の後に、発熱、下痢や嘔吐などの消化器症状に加えて、頭痛や関節痛などを認めます。多くは対症的な治療で、2週間程度で治癒しますが、高齢者を中心に重症化する症例もあり、致死率は6~30%との報告もあります。

最近では、ペットとして飼われている犬や猫がダニに咬まれてSFTSに感染し、感染したペットから人間が感染する事例が報告されています。その裏付けとして流行地域の動物病院の職員のSFTSの抗体価を調べた結果、一般住民より数倍高かったとの報告があり、動物病院の職員が知らない間に感染している可能性が高いと考えられています。

今日の新着記事ネコやイヌなどのペットから人に致死率の高い感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」がうつった例が少なくとも12件確認され【続く】

先日、私の愛犬ハルくん(ポメラニアン)を定期的なフィラリアの検査のため、かかりつけの動物病院に連れていった際、このSFTSの話題となりました。獣医さんの間では怖い感染症と認識されているようで、特に流行地域の動物病院では、連れてこられた犬や猫にSFTSの症状がないかを常にチェックしているそうです。

温暖化の波がここにも

獣医さんから、昨今の温暖化の影響で、ダニが活動する季節が若干早くなっているので、ノミ・ダニ除けのスポット剤を今年から1か月早く始めるように言われました。この獣医さんは山登りが趣味とのことで、山に登る前には犬用のスポット剤を塗っていくとのことでした。

「体重換算したら、多量のスポット剤が要りますね」と私が尋ねると、「いや、実は大型犬用のスポット剤がありますよ」とのこと。確かにセントバーナードになるとほぼ人間と同じ体重ですからね。

感染症キャッチアップは毎月10日にMed Peerに掲載されている「Dr.前﨑の感染症Catch-Up!」の記事を転載しています。

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