別名はヒト喰いバクテリア
劇症型溶血性レンサ球菌感染症はβ溶血性連鎖球菌による敗血症です。
急速に進行し、ショック状態となり死亡することも多いため、「ヒト喰いバクテリア」と呼ばれています。
1987年に米国で最初に報告され、日本における最初の典型的な症例は1992年に報告されています。
約3割以上の患者さんが死亡する大変怖い病気の1つです。
子供から大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、とくに高齢者では死亡率が高くなります。
原因はA群溶血性レンサ球菌Streptococcus pyogenes
劇症型溶血性レンサ球菌感染症の主な原因微生物はA群溶血性レンサ球菌Streptococcus pyogenesです。
この菌は特殊な染色液を使って顕微鏡で見ると、青く染まる、丸い菌で、連鎖状につながってみえます。
血液寒天平板培地で培養すると菌の周りに透明な溶血を示すβ溶血を認めます。
子供の喉が赤く腫れる咽頭炎の主な原因菌です。
症状がみるみる悪化していきます
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は何の病気もない健康な人にも突然発症します。
最初は手や足に突然痛みがでてきます。
痛みはとても強くて、押さえると痛みはますます強くなります。
また、全身症状としては発熱を認めることがありますが、極めて重症の時には逆にショック状態となって体温が低くなることもあります。
痛みのある部分は次第に紫色に変色し、水ぶくれができたりしました。
進行すると、ショック状態になって、意識がなくなったり、錯乱状態になったりします。
治療にはペニシリン系の抗生物質を使います
重症の患者さんでは血液を直接特殊な染色をして顕微鏡でみるとA群溶血性レンサ球菌を認めることがあります。
確定診断には血液中からA群溶血性レンサ球菌を培養することによって診断します。
治療にはペニシリン系の抗生物質を使いますが、ショック状態のことが多く、全身管理が重要です。
また、紫色に変色したり、水ぶくれができた部分は手術で切除しなければいけません。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症