忘れてはいけない感染症。寄生虫の病気
ある日当然、お尻からきしめんが。
日本海裂頭条虫は長さが数mにも成長し、お尻から出てくる寄生虫です。
日本海裂頭条虫はヒトやヒグマの腸の中に寄生し、卵を産んで、便と一緒に外にでます。
卵から幼虫となって、ミジンコの中で育っていきます。
そして、ミジンコを食べた魚の中で育っていきます。
その魚をたべたヒトの腸の中で成虫となって、また卵を産みます。
ヒトはサクラマス、カラフトマス、シロザケなどのお刺身、お寿司、カルパッチョや燻製などを食べて感染します。
ヒトの腸の中で、1ケ月後には数mの成虫に育ちます。
日本海裂頭条虫が腸の中にいても無症状のことが多いのですが、ある日当然きしめんのような虫がお尻から出てきます。
それを引っ張って取り出すと、数mの成虫が出てきます。
強く引っ張っても途中で切れることはなく、箸などにぐるぐる巻きにして取り出すことができます。
先日も出てきた虫を瓶に入れて持ってこられた患者さんがおられました。
日本海裂頭条虫は便の中に卵を出すので、検査は便を顕微鏡で調べて卵があれば、診断できます。
患者さんはお腹が痛くなったり、下痢をしたりすることはありませんが、治療には駆虫薬を飲んでもらいます。
駆虫薬を飲んでから、下剤を一緒に飲んでもらって、できるだけトイレに行くことを我慢した後に、一気に便を出してもらいます。
すると、数mの虫体が出てきます。
出てきた虫を調べて、頭がちゃんとついているかを確認します。
もし、頭がついてなければ、まだ腸の中に残っている可能性もありますので、1月後に便の中の卵を検査します。
もし、卵があれば、もう一度駆虫薬を飲んでもらいます。
でも、本当にこんな虫がお尻から出てきたらびっくりしますよね。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症