新型コロナウイルス感染症。基本的なことを抑えましょう(第2回)
本当に怖いコロナウイルスです。SARSとMERS
前回の解説で、成人の風邪の約15%はコロナウイルスが原因ということをお話ししました。
確かに、風邪であれば、解熱薬などを飲んで、安静にしていれば数日で治ってしまうので、恐れることはありません。
しかし、コロナウイルスの中には、とても怖いウイルスがあるのです。
それが、SARS(重症呼吸器症候群)-コロナウイルス(SARS-CoV)とMERS(中東呼吸器症候群)-コロナウイルス(MERS-CoV)です。
SARS-CoVは02年11月に中国の広東省で1例目が発見され、03年の3月までに世界中に広がりました。
SARS-CoVは重症の肺炎を起こし、65歳以上の高齢者では死亡率が50%以上になる危険な感染症でした。
その後、患者の早期発見と厳重な隔離によって、流行は終息しました。
このSARS-CoVはジャコウネコやハクビシンといった野生動物からヒトに感染したものではないかと考えられています。
もう一つの危険なコロナウイルスがMERS-CoVです。
MERS-CoVは12年9月にサウジアラビアのジェッダで1例目が発見されました。
このコロナウイルスも最初は野生のコウモリからヒトに感染したと考えられています。
その後、ヒトコブラクダに感染が広がり、今では多くの症例がラクダからヒトへの感染によるものと考えられています。
MERS-Covは今でもサウジアラビアなど中東諸国を中心に、1年間に数千人の患者が発生しています。
さらに、MERS-CoVに関しては15年の韓国での大流行が記憶に新しいところです。
韓国では中東地域から仕事で帰ってきた1人の会社員の男性からこの流行が始まり、同年5月から7月にかけて大流行となりました。
この時の流行では多くの患者さんが病院などの医療機関で感染したことが明らかになり、院内感染対策の重要性が改めて強調されました。
また、スーパースプレッダーと言われる患者さんは、1人で数十人の人に感染させたとして、その感染力の強さに驚かされました。
そして、今まさに新たな怖いコロナウイルスであるCOVID-19が世界中で猛威を振るっています。
次回は、今話題となっている新型コロナウイルスの変異種について解説します。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症