感染を防ぐ大事な作業 滅菌・消毒(第1回)
そもそも滅菌と消毒はどう違うか
今回の感染症の小部屋では、感染を防ぐための大事な作業として滅菌・消毒を取り上げます。
近頃のコロナ禍のなかで、消毒液がいたるところにおいてあります。
まず最初に滅菌と消毒の定義から解説することにします。
消毒すると菌が完全にいなくなると思われますが、実はそれは滅菌のことなのです。
滅菌とはすべての微生物を物理的、科学的手段を用いて殺滅させるか、完全に除去し無菌状態をつくることと定義されています。
それに対して、消毒は人体に有害な微生物の感染性を物理的、科学的手段を用いてなくすか菌量を少なくすることと定義されています。
すなわち、消毒しても菌が全くいなくなるわけではありません。
物理的手段とは滅菌では高圧蒸気など、消毒では煮沸やろ過などになります。
科学的手段とは滅菌ではエチレンオキサイドなどで、消毒では消毒剤になります。
また、最近はよく除菌という言葉を耳にしますが、この除菌は全く医学的な言葉ではありません。
除菌でも菌の量はある程度少なくなるかもしれませんが、消毒では感染性がなくなるまで菌を少なくするとされていますが、
除菌では感染性がなくなることは保証されていません。
もし、感染性がなくなるのであれば、それは消毒と言う言葉を使うことになります。
除菌では決して安心できなことになります。
言葉の意味をしっかり理解して、物を使うことが大切です。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症