知っておきたいおとなのワクチン(第1回)
成人の男性は必ず済ませておきましょう。風しんのワクチン
今回から感染症の小部屋では数回にわたっておとなのワクチンの話題を取り上げます。
ワクチンあるいは予防接種と聞くと、子供のことと思いがちですが、実はおとなにも大事なワクチンがあります。
第1回の今回は風しんワクチンを取り上げます。
風しんは風しんウイルスによるウイルス感染症です。潜伏期間は2~3週間と比較的長く、また感染力がとても強いことが特徴です。
感染すると発熱、発疹、リンパ節腫脹などの症状が見られますが、多くは自然に治ってしまいます。
しかし、妊娠20週までの妊婦さんが感染するとお腹の中の赤ちゃんに感染し、先天性風しん症候群を発症することがあります。
生まれてくる赤ちゃんに白内障や難聴、さらには先天性心疾患などの異常を認めることがあります。
子ども頃の風しんの予防接種は1歳(第1期)と小学校入学前1年間(第2期)の2回接種されます。
だたし、2008年~2012年までの5年間に限っては、中学1年生(第3期)あるいは高校3年生(第4期)のいづれかで2回の接種が行われました。
しかし、それでも接種率は100%ではなく、おとなの男性に風しんが流行しました。
そこで、昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性は、2021年度までに抗体検査を受け、抗体価が低かった場合は風しんの予防接種を受けることが必要となりました。
また、女性は妊娠前に風しんに罹ったことの記録か、あるいは2回の予防接種を受けた記録を母子手帳などで確かめることが大切です。
こうしたことによって生まれてくる赤ちゃんを先天性風しん症候群から守りましょう。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症