今日の新着記事国内の医療現場で今春以降、異常事態が続いている。ある会社の抗生物質(抗菌薬)の供給が、海外の製造現場の事情で停止。その影響で他の抗菌薬も品薄となり、感染症の診療に携わる医師らから「最適な薬が使えない」と悲鳴が上がっているのだ。現時点では患者の命に関わるような問題は明らかになっていないものの、最終的な不利益は患者に降りかかる。感染症関連の4医学会は、抗菌薬の供給が不安定なのは製造の過度な海外依存が原因だとして、国に見直しを要請した。
2019年10月01日配信共同通信社
2019年10月01日配信共同通信社
お母さん
供給不足とはどんなことですか?
病院に必要な量の抗生物質が届いていません。
前崎 先生
抗生物質は肺炎など感染症の治療には欠かせないお薬です。
もし、その抗生物質がないと肺炎などが治らなくなってしまいます。
特に、高齢の方では、肺炎などで命に関わることも多いので、抗生物質が不足することはあってはいけません。
お母さん
なぜ、抗生物質が不足しているのですか?
外国の安い原材料の供給が止まってしまったからです。
前崎 先生
最近は国の医療費削減のために、特許が切れたお薬は値段が安い後発医薬品に代わっています。
後発医薬品の値段が安いわけは、外国で作られた安い原材料を使っているためです。
その外国で、原材料が作られなくなるととたんに日本で抗生物質ができなくなってしまいます。
お母さん
抗生物質の供給が止まると、お薬が効かない菌が増えるのはなぜですか?
使えるお薬が少なくなると、同じお薬ばかりを使うようになって、お薬が効かない菌が増えます。
前崎 先生
抗生物質が効かなくなった菌を薬剤耐性菌と呼びます。
もし、抗生物質の供給が不足すると、十分に供給のできるお薬ばかり使うことになります。
そうなることによって、その抗生物質が効かない菌が作られてきます。
もし、そのお薬がいろいろな菌に効くお薬とすれば、いろいろな菌が耐性菌となってしまいほかの抗生物質も効かなくなってしまいます。
ここがポイント抗生物質の供給が不足すると、感染症が治せなくなるばかりでなく、抗生物質が効かない耐性菌が増えてしまいます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症