結核。それは昔の病気ではありません。
世界からみれば、日本はまだ結核の多い国です。
結核という病気をみなさんはご存知でしょうか?
何となく、昔は多かったけど、今では結核なんてないのではと思っている人が多いと思います。
でも、日常的に大学病院で診療をしていると、今でも1年間に数人の結核の患者さんを診ています。
結核は戦前から戦後まもなくまで、わが国では最大の感染症でした。
多くの医師や研究者は結核をどうやって治すか、毎日診療や研究をしていました。
その成果で、戦後一貫して結核の患者数は減少していきました。
1997年に一時的に患者数が増えたことがありましたが、その後も順調に患者数は減り続けてきました。
でも日本は世界の中ではまだ結核の患者ある程度、発生する国です。
もちろん、インドや中国やアフリカの国々に比べると患者数は少ない国ですが、
わが国の結核の罹患率(人口10万当たりの患者数)は2017年で、13.3ですが、例えば米国は2.7、ドイツは7.0、フランスは7.2と欧米の国々と比べると多くなっています。
それから、今の結核の特徴は高齢者と外国人です。
以前では結核は比較的若い人の感染症でしたが、社会から結核がなくなるにつれて若い人は結核に感染しなくなりました。
それと、社会のグローバル化に伴って、結核の患者数が多い国から日本にやってきた外国人が、日本で発症するケースが多くなってきました。
それでも、今でも少しずつではありますが、結核の患者数は減ってきています。
今回は忘れられつつある感染症。結核について数回に分けてお話しします。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症