今では不治の病ではありません HIV・エイズの話(第1回)
エイズの原因微生物です。HIV
今回はHIV・エイズの話題を取り上げます。
数十年前までは、エイズは不治の病で、病気になればすべての人が死んでしまうと思われていました。
今でも、多くの人はエイズは怖い病気と思っていますが、実は今ではきちんと薬を飲めば、すべての人は長生きできます。
そんなエイズのお話しの1回目は、病気の原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)について解説します。
エイズはHIVと呼ばれるウイルスによるウイルス感染症です。
HIVの発見のきっかけは1981年に米国のニューヨークとサンフランシスコの同性愛者の中に奇妙な肺炎や悪性腫瘍が多発しました。
奇妙な肺炎はその後、ニューモシスチス肺炎と、また悪性腫瘍はカポジ肉腫であったことがわかりました。
それらの患者はすべてリンパ球の一種であるCD4と呼ばれる成分が少なくなっていました。
そして、1984年にその患者の血液からヒト免疫不全ウイルス(HIV)が発見されて、エイズはこのウイルスによる感染症であることが証明されました。
その後、HIVは世界中に瞬く間に広がり、2000年の前半には世界で約3,400万人が感染していることをWHO(世界保健機構)が公表しています。
中でも、サハラ砂漠以南のアフリカでは多くの人が感染し、成人の約が5%はHIVに感染していると言われています。
しかし、1990年後半をピークに世界中の感染者数は徐々に減少しています。
その中で日本は感染症数の減少が少なく、現在でも少しずつではありますが患者数が増えています。
次回はHIVが感染すると、どのようにしてエイズと呼ばれる病気になっていくかを解説します。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症