理論的に感染を防ぐ
自分が感染することを防ぐためには何をするか。理論的な感染制御
相手によって感染予防の方法を考えよう。
巷では新型コロナウイルスの話題で連日持ち切りです。
私自身も多かれ、少なかれ新型コロナウイルスに関わっていますので、このサイトの更新をする時間もなく、忙しくしています。
心身ともに少し落ち着きましたので、「感染症の小部屋」を再開したいと思っています。
私は感染症の患者さんの診断や治療を仕事としている一方、病院の中で起こる様々な感染症が蔓延しないようにするための感染対策あるいは感染制御も一つの大きな仕事としています。
今回の新型コロナウイルスもそうですが、感染制御を考える時には、まず相手の病原微生物がどんな方法で感染するかを突き止める必要があります。
理論的な感染予防は相手をよく知ってから
今からお話しする理論的な感染予防の考え方が確立されるまでは、感染症は何でも隔離すればそれで充分と考えられてきました。
日本で初めて西洋医学を教えた長崎医学校(実は私の母校でもあります)のポンぺ先生が「ある疾患の患者と別の患者を交えてはいけない」と言っていることをが司馬遼太郎の「胡蝶の夢」の一節にでてきます。
このように、感染症は患者を隔離することが、最大の感染予防と考えられてきました。
確かにこの考え方は今でも感染予防に重要なことですが、隔離するだけでは予防できない感染症もあります。
この考え方が米国から発信された感染経路別の感染予防の考え方です。
感染経路別の感染予防の考え方とは
感染経路別の感染予防は3つに分類され、それぞれ空気感染、飛沫感染、接触感染に分類されます。
医学生の講義の際によく話すのですが、「もし私が空気感染する感染症の場合、この教室いる学生の中でどれくらいの人が感染しますか?」と質問します。
答えは、「この教室にいるすべての人が感染します。」になります。
では、飛沫感染ではどうでしょう。
答えは、「この教室の前から2、3列目に座っている人だけです。」
接触感染ではどうでしょう。
答えは、「この教室の人はだれも感染しない。」
となります。これが、理論的な感染予防の基本的な考え方です。
次回からはそれぞれの感染経路別の感染予防とそれに必要は道具(グッズ)についてお話しします。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症