再び新型コロナウイルスの話題(最終回)
「コロナ後」社会が愛犬に与える影響
新型コロナウイルス感染症の新規陽性患者数も著しく減少し、次第にコロナ後を見据えた社会に移りつつあります。
そこで今回はコロナ後に問題になるかも知れない感染症として、犬や猫から感染する病気を取り上げます。
コロナ後の社会が愛犬に与える影響について、英国から興味深い報告がありました。
無類の犬好き国民として知られる英国では、多くの人がペットの犬と一緒に生活しています。
その英国人、コロナが流行っている間は外出を控えていましたが、コロナ後は一斉に外出するようになりました。
犬にとっては悲しいことに、「お留守番」の時間が一気に長くなることになりました。
報告によると、飼い主といないことがストレスとなって、モノや人に噛みつく犬が多くなったといいます。
猫に関しては特に影響はないかもしれません。
しかし、この犬のお留守番ストレスが原因で、感染症が増えてくる恐れがあります。
犬や猫にまつわる感染症では、咬まれることが最も多い原因となります。
動物に咬まれて病院を受診する人のうち、犬が9割、猫が1割と、圧倒的に犬が多いといわれています。
咬まれ方にも違いがあります。
犬の場合は英語で「laceration」と表現され、引きちぎられるとか、食いちぎられる、といいます。
犬は噛みついた後に、強い力で引っ張るためでしょう。
これに対して、猫の場合は「puncture」と表現され、小さな穴をあけるといった意味になります。
猫は鋭い牙で穴をあけますが、犬のように引っ張ることはないので、垂直に力が加わるということですかね。
傷口が感染する危険性は、犬から咬まれたときの方が、猫から咬まれたときよりも5倍から10倍になるといわれています。
犬に咬まれた傷は深くなり、皮膚の深く、ときには骨まで傷が届くことがありますが、猫に咬まれた傷は浅いけれど菌による感染症が起こりやすいということです。
今回はコロナ後に増えるかも知れない(増えないかも知れません)感染症の話題を取り上げました。
今回でコロナ関連の話題はおしまいとします。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症