こんなところにも感染症が(最終回)
一度感染すると治療に難渋します。骨の感染症
このシリーズの最終回は骨の感染症について解説します。
整形外科では一般的にみられる感染症ですが、骨の感染症は一度発症すると治療に難渋することが多くあります。
なかでも、代表的な感染症が骨髄炎です。
骨髄炎は骨折などが原因となって直接外から菌が骨に感染する場合と、血液を介して菌が感染する場合があります。
外から直接に菌が感染する原因は骨折のほかにも、整形外科的な手術、褥瘡、糖尿病による足の壊疽などが原因となります。
その他にも、犬や猫に咬まれて菌が感染する場合もあります。
血液を介して感染する原因には、感染性心内膜炎、血液透析、静注薬物乱用などがあります。
原因菌としては黄色ブドウ球菌が最も多く、腸球菌や連鎖球菌などもあります。
稀に、脊椎に結核菌が感染して、脊椎カリエスと呼べれる病気を起こします。
骨髄炎が起きると、じっとしていても腰や背中に痛みを感じたりすることがありますが、高い熱がでることは少なく、むしろ熱がでないことも多くあります。
診断にはレントゲンやMRI検査をして、炎症を起こしている骨に針を刺して、そこから膿をとって感染している菌を調べます。
原因となる菌が判明すれば、その菌に効果のある抗生物質を注射します。
ただし、他の感染症と違って、抗生物質の注射は1~2ケ月間は必要となります。
それでも、治らないこともあり、その場合は手術でその部位を取り除く必要があります。
いづれにしても治療に難渋する感染症の代表格です。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症