梅雨の季節はジメジメ
カビみたいじゃないカビ 酵母
第2回のカビのお話しの時に、パンやお餅に生えるふわふわしたカビのことをお話ししましたが、そうではなくて全く別の形をしたカビがいます。
よく、お風呂場などの隅っこを見ると何やら黒いカビみたいなものができます。それをお掃除するときは「カビキラー」や「カビハイター」を使います
そうです。それがカビなのです。
パンやお餅に生えるカビは糸くずのような形をしていることから、糸状菌と呼ばれますが、このお風呂の黒いカビは酵母と呼ばれるカビです。
この酵母も私たちの生活には大事です。実はこれからますます美味しくなるビールはこの酵母がないとできません。
キリン一番搾りやアサヒスーパードライなどそれぞれのビールでは、特別な酵母を使っていて、この酵母はとても大切な企業秘密なのです。
この酵母の形をしたカビの中にクリプトコックスというカビの仲間がいます。
このクリプトコックスは鳩のウンチの中にいて、鳩がウンチをすると、その中のクリプトコックスが地面に出て、それが風に舞って、近くにいた人間がそのクリプトコックスを吸い込むことによって肺に病気を起こします。
普通のヒトはこのクリプトコックスに感染しても、熱が出たり、咳や痰がでたりすることは少なく、たまたまレントゲン写真を撮って見つかることが多いと思います。
でも、何らの病気があって免疫力が落ちているヒトや、飲んでいる薬の副作用で免疫力が落ちているヒトが感染すると、時として髄膜炎を起こすことがあるカビとしては注意が必要になります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症