こんなところにも感染症が(第2回)
歯も感染症を起こします、歯性感染症
今回の小部屋では内科が専門の私としてはあまりなじみのない感染症を取り上げます。
感染症は全身に病気を起こす疾患などで、全身のあらゆる臓器に感染します。
2回目の今回は歯科医で見かける歯の感染症としての、歯性感染症を取り上げることにします。
口の中は常に多くの細菌がいるため、歯はいつも感染の危険性があります。
その中でも口腔内レンサ球菌や嫌気性菌と呼ばれる菌がその原因の多くを占めています。
歯性感染症は歯の表面から顎の骨の中まで、感染がより深いところに到達すればするほど重症になってきます。
まずは、歯ぐきや歯の根っこに起こる感染で歯周組織炎と呼ばれています。
多くは、歯の根っこの周りに膿瘍(膿の塊)をつくります。
その他には、親知らずに感染を起こすことがあり、これを歯冠周囲炎と呼ばれています。
歯ぐきに埋もれた親知らずに菌が感染することによって、歯ぐきが腫れたり、痛くなったりします。
このような感染症を治療しないで放置していると顎の骨まで感染が波及していきます。
そして、顎炎と呼ばれる歯性感染症を起こしていきます。
そうなると、口腔外科で手術が必要となり、一般的な歯科の処置や抗生物質では治らなくなってしまいます。
さらに、感染が増悪すると周りの臓器にまで波及していきます。
顎下隙や舌下隙、オトガイ下隙などの隙感染症として、顎の骨の周りに膿瘍(膿の塊)ができてしまいます。
このように歯の感染症も早い段階で、歯科医にきちんと受診して処置や治療をしないと大変なことになります。
皆さんもくれぐれも気を付けてください。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症