子供たちと感染症
特徴的な咳をみたら、百日咳
今回は子供たちの感染症として、特徴的な咳を認める百日咳です。
百日咳の原因微生物はグラム陰性桿菌である百日咳菌（Bordetella pertussis）と呼ばれる細菌で、鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染、および接触感染で感染します。
母親からの免疫（経胎盤移行抗体）が十分でないため、小さな赤ちゃんでも罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6 カ月以下では死に至る危険な感染症です。
百日咳の症状は病気の経過とともに変わってきます。
一般的には7～10日間程度の潜伏期の後、普通のかぜ症状で始まり、だんだん咳が多くなってきます。
その後で、百日咳に特徴的な発作性けいれん性の咳がでてきます。
この咳はコンコンという短い咳が連続的にでた後、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音が出ることがあります。
このような特徴的な咳が長いときは2～3週間続くこともあります。
咳は夜に多く、年齢が高くなるほどこの特徴的な咳がでます。
だんだんと咳は治まってきますが、咳が全くなくなるまでには、2～3ケ月かかることもあります。
今では、百日せきワクチンを含むDPT三種混合ワクチン（ジフテリア・百日咳・破傷風）あるいはDPT-IPV四種混合ワクチン（ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ）の接種がわが国を含めて世界各国で実施されており、その普及とともに各国で百日咳の発生数は激減しています。
学校や幼稚園は特有の咳が消失するまで又は5日間の百日咳に有効なお薬を飲み終わるまで出席できないことになっています。
ワクチンがない時には、小さな子供では死亡することもある感染症でしたが、まではきちんとワクチンを接種することによって防ぐことができるようになりました。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症