賢く使おう抗菌薬(第3回)
抗菌薬の副作用には気を付けて
抗菌薬の話題の第3回目は副作用について解説します。
抗菌薬はさまざまな感染症の治療には欠かせない薬剤です。
しかし、すべての抗菌薬は人間の体の中にない成分から作られています。
そのため、すべての抗菌薬にはなにがしかの副作用を起こす危険があります。
ペニシリンなどの抗菌薬は薬剤の中でも比較的安全な薬と思われています。
赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢に使うことができ、その安全性には優れたものがあります。
ただし、薬剤であることから副作用の危険性は必ずあります。
抗菌薬の副作用は大きく分けて2つの可能性があります。
それは、用量非依存性と依存性の副作用です。
用量とは抗菌薬を飲む薬の量のことになります。
用量非依存性の副作用とは少しの量の薬でも体の中に入ると起きる副作用です。
逆に用量依存性の副作用とはある一定以上の濃度の薬が体の中に入って起こる副作用です。
用量非依存性の副作用の代表はアレルギーになります。
例えば、ペニシリンショックと呼ばれ、ほんの少量のペニシリンを飲んだだけでもひどいときはショックになってしまうことがあります。
その他、抗菌薬による皮疹である薬疹と呼ばれる副作用もあります。
このような副作用を未然に防ぐにはこれまでの服薬によるアレルギーの有無を確認することが大切です。
ただし、初めて飲む抗菌薬では服薬歴は参考になりません。
そのような場合は、薬疹などのアレルギーの症状がでた時には、直ちに服薬を止めて医師に相談してください。
また、以前に抗菌薬を飲んだ時にアレルギーの症状がでたことがある場合は、抗菌薬を処方してもらう際にそのことをきちんと医師に伝えてください。
用量依存性の副作用は、入院して点滴で使う抗菌薬に多く、血中の抗菌薬の濃度を検査して、適正な投与量に調節することによって防ぐことができます。
抗菌薬の話題の最終回は抗菌薬と薬剤耐性菌の解説をする予定です。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症