結核。それは昔の病気ではありません。
結核の原因菌は結核菌です。
結核の原因菌は読んで字のごとく結核菌です。
この結核菌は菌の周りにワックスをもっています。
このワックスのおかげで酸に対して抵抗性があります。
大腸菌などの普通の菌は酸の濃度が高い胃液の中では生きていくことはできません。
でも、結核菌は胃液の中でも生きていくことができます。
そのため、結核菌の仲間の菌を抗酸菌(酸に抵抗できる菌)と呼ぶこともあります。
また、このワックスを持っていることを利用して、特殊な染色液で結核菌を染めることによって、菌を見つける検査法があります。
それから、結核菌の特徴は菌が育つまでに長い時間がかかることです。
普通の菌は、菌が育ちやすい培地と呼ばれる寒天の上に2日ほどおいて置けば育ってきますが、結核菌はその時間が2ケ月かかります。
この結核菌が育ちやすい培地は小川培地と呼ばれて、日本人が開発したもので、これが長い間、結核の検査には欠かせないものでした。
でも、診断するのに2ケ月も待っていたら病気は悪くなってしまいます。
今では、最新の技術を使って結核菌の遺伝子を見つけることによって、1日で診断できるようになりました。
それから、結核菌のもう一つの特徴は、空気中をふわふわ浮遊して感染することです。
そのため、同じ空気を吸っている人であれば、どんなに離れていても感染します。
そのため、学校や職場でいまでも結核の集団発生が時々起こっています。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症