今は海外旅行に行けませんが、輸入感染症
蚊から感染する輸入感染症。デング熱とマラリア
今回は蚊から感染する輸入感染症として、デング熱とマラリアを取り上げます。
デング熱とマラリアはともに蚊に刺されることによって感染します。
ただ、デング熱はデングウイルスによるウイルス感染症ですが、マラリアはマラリア原虫による原虫感染症です。
まず、デング熱ですが、この感染症は主に東南アジアや南アジア、中東やアフリカ諸国で感染する機会が多い病気です。
デング熱の原因であるデングウイルスはわが国で発生する日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルスと呼ばれるウイルスです。
デング熱は蚊に刺されて感染すると1週間以内に突然、高い熱が出ます。
その後で、目の奥が痛くなったり(この症状はデング熱によく見られます)、そのほかに筋肉痛や節々が痛くなるなど、インフルエンザに似たような症状が出ます。
デング熱は重症になることはあまりありませんが、稀にデング出血熱と呼ばれる重症の病気になります。
デング熱に有効な薬や、感染予防のためのワクチンなどは現時点ではありません。
治療は解熱薬など対症療法を行って、多くの患者さんは自然に回復します。
もう一つの蚊から感染する輸入感染症がマラリアです。
マラリアは世界中で最も患者さんが多い感染症です。
マラリアを感染させる蚊は、熱帯から亜熱帯の国々に多く生息しています。
マラリアは原虫と呼ばれる微生物による感染症で、いくつかの種類があります。
現在、世界中で流行しているマラリア原虫は、熱帯熱マラリアと呼ばれる種類が多くみられます。
マラリアに感染するとデング熱と同じように突然の高い熱が出ます。
血液の検査をすると、顕微鏡でマラリア原虫を見つけることができます。
マラリアの治療には抗マラリア薬と呼ばれるお薬を使います。
また、マラリアはお薬を飲むことによって感染しないように予防することができます。
マラリアが流行している国に行くときには、病院と相談して、お薬をもらってマラリアに感染しないようにすることでできます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症