なんとなくどこにも属さない生き物たち(第1回)
細胞壁をもたない生き物です。マイコプラズマ
感染症を起こす微生物のシリーズの最後は、何となくどこにも属さない生き物たちを取り上げます。
その第1回は細胞壁をもたない生き物であるマイコプラズマを取り上げます。
マイコプラズマは非常に小さな球形の生物で、細胞壁をもたない代わりに細胞膜で覆われています。
人に感染症を起こすマイコプラズマは3種で、肺炎を起こすマイコプラズマ・ニューモニエと尿道炎などを起こすマイコプラズマ・ホミニスとマイコプラズマ・ゲニタリウムです。
肺炎を起こすマイコプラズマ・ニューモニエは若い人の肺炎の原因としては最も多いと言われています。
以前は4年に1回流行し、オリンピックが開催される年に患者数が増えていましたが、最近はその傾向はなくなりました。
この肺炎は肺炎球菌などが原因となる肺炎に対して非定型肺炎あるいは異型肺炎と呼ばれています。
細菌による肺炎に比べて高い熱や、痰、呼吸が苦しくなるなどのひどい症状を認めることは少ないとされますが、頑固な咳が続くことがあります。
それと、大切なことはマイコプラズマは細胞壁をもたないため、ペニシリンなどの普通の抗生物質が効かないことになります。
そのため、マイコプラズマが原因の肺炎では、マクロライド系薬やキノロン系薬といった特殊な抗生物質での治療が必要になります。
マイコプラズマ・ホミニスとゲニタリウムは尿道炎の原因として多い微生物です。
尿道炎は淋菌によるものと、淋菌以外の原因菌によるものに区別され、この2つのマイコプラズマは淋菌が原因でない尿道炎の多くを占めています。
こちらも、ペニシリンが有効な淋菌に対して、ペニシリンが効かないため、治療するときの抗生物質を間違えないようにしなくてはなりません。
次回は、細菌でもウイルスでもないクラミジアに関して解説することとします。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症