感染を防ぐ大事な作業 滅菌・消毒(最終回)
よく使われる消毒剤の特徴を知っておきましょう。
滅菌・消毒の最終回は私たちが日ごろよく使う消毒剤について解説します。
前に解説したように、それぞれの消毒剤はどんな微生物に有効なのか。
また、その消毒剤は消毒するものにどんな影響を与えるかをきちんと把握しておくことが大切です。
消毒剤と聞くと、まずアルコールを思い浮かべると思います。
アルコールと言っても、消毒に使われるものはエタノール、イソプロパノール、配合アルコールの3種類があります。
アルコールはウイルス、細菌、カビなど幅広い微生物に有効ですが、芽胞を作る菌には効き目がありません。
また、ウイスルの1種であるノロウイルスにはエタノールは効きませんが、イソプロパノールはある程度効果があります。
エタノールは使用に際して、引火性があるので、火の取り扱いには注意が必要です。
イソプロパノールは吸い込むことによって体に害が及ぶので、特に小さな赤ちゃんに使ってはいけません。
次に次亜塩素酸ナトリウムです。
この消毒剤もウイルス、細菌、カビまで幅広い効果があります。
しかし、アルコールと同様に、芽胞を作る菌には効き目がありません。
次亜塩素ナトリウムは最終的には食塩になって、環境中には残らないため、毒性がほとんどありません。
ただし、この消毒剤は濃度が薄くなると効果がなくなるので、使う時には注意が必要です。
もうひとつがポピドンヨードです。
ヨードチンキと呼ばれて広く使われている消毒剤です。
ポピドンヨードも様々な微生物に対して有効な消毒剤です。
使うときは、塗布した後に十分に乾燥させることが大切です。
ただし、ヨードが含まれているので、普通の使い方では問題はありませんが、長期間に及んで使う時には
甲状腺に蓄積される危険もあるので注意が必要です。
これで、滅菌・消毒のシリーズは終了します。
世の中にはあまり効果がない消毒剤も出回っていますので、正確な知識を得てから購入してください。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症