今は海外旅行に行けませんが、輸入感染症
以前は輸入感染症の代表格でした。コレラと赤痢
今は新型コロナウイルスの影響で気軽には海外旅行に行けませんが、いつもなら夏休みを利用して海外旅行に行った人も多いと思います。
今回はこのように海外旅行から帰った後に日本で病気になる輸入感染症を取り上げます。
第1回はこれまで輸入感染症として代表格的であったコレラと赤痢について説明します。
その前に私たち医師が輸入感染症の患者さんを診察するときは、いつ、どこに、何をしに行ったかをまず初めにお聞きします。
例えば、1週間前にアフリカのジャングルにいって、ゴリラの研究をした人と、1週間前にニューヨークの高級ホテルに滞在し、ミュージカルを観に行った人では、輸入感染症にかかる危険性が全く違ってきます。
では、最初にコレラについて説明します。
コレラはコレラ菌による細菌感染症です。
コレラ菌に汚染された水や食物を口から摂取することによって感染します。
熱帯から亜熱帯のコレラの蔓延地域に旅行することによって感染します。
インドやバングラディシュなど東南アジアは流行している地域です。
コレラ菌に感染すると下痢がでるようになります。下痢の量も回数も多いことが特徴です。
コレラになると米のとぎ汁様の下痢と言われる白色ないし灰白色の水のような下痢が起こり、特有の甘くて生臭い臭いがすることがあります。
普通は抗生物質や点滴をすることによって治ります。
赤痢も赤痢菌による細菌感染症で、コレラと同じように汚染された水や食べ物を介して感染します。
インド、インドネシア、タイなどのアジア地域に多く、これらの国で感染し、日本に帰ってきてから発症します。
赤痢菌に感染すると1 〜3日後に熱が出て、身体が怠くなり、その後で下痢がでてきます。
コレラと違って下痢には血が混じることが多く、コレラよりもお腹が痛くなることが多いようです。
赤痢も有効な抗生物質を投与して、点滴などで脱水にならないように治療すれば、回復する病気です。
今回は輸入感染症としてどちらも水や食べ物から感染して、下痢がでるコレラと赤痢を取り上げました。
次回は、輸入感染症としては珍しいカビ(真菌)の感染症を取り上げます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症