ばい菌の仲間たち 青く染まる菌(グラム陽性菌)(第2回)
読んで字のごとく肺炎を起こす菌です。肺炎球菌
グラム陽性菌の第2回は読んで字のごとく肺炎の原因として最も多い肺炎球菌を取り上げます。
肺炎球菌はグラム陽性の球菌で、前回のブドウ球菌と同じように丸い形をしています。
ブドウ球菌がブドウの房のような形をしていたのに対して、肺炎球菌は2つの丸い菌が繋がった形をしています。
その見た目から以前は肺炎双球菌ともよばれていました。
肺炎球菌は細菌の中では、肺炎の原因として最も多い菌です。
特に、高齢者の肺炎の多くはこの肺炎が原因と言われています。その他には髄膜炎の原因としても多く、中耳炎や副鼻腔炎などの耳鼻科の病気の原因にもなります。
肺炎球菌は健康の人の鼻や喉にいて、免疫力が落ちるとその菌が感染したり、咳やくしゃみで他の人に感染したりします。
肺炎球菌は菌の外側に莢膜と呼ばれるものをもっていて、その莢膜が病気の原因と考えられています。また、莢膜の種類は約20種類くらいあって、それによって菌を区別することができます。
肺炎にはペニシリンと呼ばれる抗生物質がよく効きます。しかし、最近になってこのペニシリンが効かない薬剤耐性菌であるペニシリン耐性肺炎球菌が増えてきました。この耐性菌はペニシリン以外のたくさんの抗生物質が効きにくくなるので、治療が難しくなってしまいます。
また、肺炎球菌には感染を予防するためのワクチンがあります。
一つは多糖体ワクチンと呼ばれ、もう一つは結合型ワクチンと呼ばれています。
このワクチンは高齢者の肺炎の予防と、子供たちの髄膜炎の予防として、わが国でも定期的に接種することができます。
確実にワクチンを接種することによって、いまでは肺炎球菌の感染症を防ぐことができるようになりました。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症