今では不治の病ではありません HIV・エイズの話(第2回)
HIVに感染するとその後どうなるのでしょうか。
エイズはHIVによるウイルス感染症です。
人の体の中に侵入したHIVは血液の成分の一つであるリンパ球の中でヘルパーT細胞と呼ばれる細胞に結合します。
このヘルパーT細胞の表面にはCD4受容体と呼ばれるものがあり、HIVはこの受容体に結合します。
そして、その細胞内に遺伝子であるRNAが組み込まれて、新しいウイルスを作り出します。
このCD4陽性細胞と呼ばれるリンパ球は人の体の中で、免役をつかさどる大切な細胞です。
人の体の中に、異物であるウイルスや細菌などが侵入した時に、このCD4陽性細胞の働きによって、それらを排除しようとします。
しかし、HIVはこのCD4陽性細胞の中に侵入して、この細胞の働きを止めてしまい、細胞そのものも破壊してしまいます。
そのため、HIVに感染すると、徐々にCD4陽性細胞の数が減ってきます。
それによって、人の免疫が機能しなくなり、健康な人であれば、感染しないような微生物にまで感染するようになります。
このような感染症を日和見感染症とよび、病原性がとても弱い微生物でも感染します。
ただし、このCD4陽性細胞の減り方は人によって様々です。
多くの場合は感染してから3~10年の時間を経て、CD4陽性細胞の数が急激に少なくなっていきます。
しかし、HIVに感染して10年以上の時間を経てもCD4陽性細胞の数があまり減らない患者さんもいます。
CD4陽性細胞がある一定数以下になると、日和見感染症を起こしやすくなりエイズという病気になります。
次回はこのエイズの日和見感染症について解説します。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症