再び新型コロナウイルスの話題(第3回)
これからのコロナは外来が中心に
ワクチンは明らかに重症化の予防に寄与します。
日本は、ワクチンの接種開始では世界の中で少し後れを取りました。
しかし、その後は順調に接種が進み、現時点では国民の希望者全員に2回の接種が終了する時期も見え始めてきました。
わが国でも少なからずワクチン接種を希望しない方や、さまざまな理由で接種できない方もいます。
そのような方の中には感染して重症化することもあると思いますので、今後も重症例は少なからず発生するでしょう。
しかし、多くの国民が2回のワクチン接種を済ませると、仮に感染したとしてもほとんどは軽症で済むと思います。
そう考えると、今後の新型コロナウイルス感染症の治療の場は外来が主体となると考えます。
外来治療が主体となると言っても、現時点の外来治療で使える薬剤は抗体療法(中和抗体薬「ロナプリーブ」:一般名カシリビマブ/同イムデビマブ)とソトロビマブのみです。
抗体療法も有効な治療ですが、やはり外来治療の中心は経口薬になると思います。
これまで新型コロナウイルス感染症に対する経口薬としては、新型インフルエンザの治療薬としての適応を有したファビピラビル(アビガン)の臨床試験がわが国や中東実施されています。
米国メルク社で開発された核酸アナログ製剤であるモルヌピラビルの臨床試験が終了し、欧州や米国で承認審査が行われています。
米国ファイザー社と日本の塩野義製薬が3CLプロテアーゼ阻害薬としての新型コロナウイルスの治療薬を開発し、急ピッチで有効性と安全性を検証する臨床試験を行っています。
これらの経口薬は1日1回から2回、5日間経口投与することによって、軽症の新型コロナウイルス感染症の治療が可能になると期待されています。
順調に臨床試験が進めば、近い将来には治療の中心になると思われます。
今回は少し専門的な内容になってしまいましたが、ワクチンの開発や経口薬の開発など人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ時もそう遠くないところまで来ています。
その日を期待して、もう少し我慢することにしましょう。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症