新型コロナウイルス感染症。基本的なことを抑えましょう(第6回)
新型コロナウイルス感染症の治療法は
新型コロナウイルス感染症に関する話題の6回目は治療法について解説します。
少し専門的な内容になるかもしれませんが、できるだけわかりやすく解説します。
まず、現時点では新型コロナウイルスを完全になくしてしまうような強力な薬はありません。
例えば、新型コロナウイルスと同じウイルスのインフルエンザにはタミフルをはじめいくつかの有効な薬があります。
しかし、新型コロナウイルスにはそのような薬はありません。
ただし、新型コロナウイルスと同じRNAウイルスの仲間に効く薬がある程度は有効なことがわかってきました。
その一つがレミデシビルと呼ばれる薬です。
この薬は本来はエボラウイルスに有効な薬として作られました。
ウイルスが増えるときに必要なRNAポリメラーゼと呼ばれる酵素の働きを邪魔することによって効き目が現れます。
このレミデシビルが新型コロナウイルスに対しても有効な薬として、実際の患者さんの治療に使われています。
その他にも日本で作られたインフルエンザの薬の一つであるファビピラビルや、寄生虫の薬であるイベルメクチンなども効果が今現在確かめられています。
もう一つの薬がステロイドと抗サイトカイン抗体です。
新型コロナウイルスの肺炎がひどくなるのは、ウイルスが増えることよりも、むしろ人間の過剰な免疫反応によることがわかってきました。
そのため、その過剰な免疫反応を抑えるためのステロイドや抗サイトカイン抗体が治療に有効な薬として実際に使われています。
どちらにせよ、現時点では新型コロナウイルスの特効薬はありません。
できるだけ感染しないように注意することが一番大切です。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症