感染症を治す 抗生物質の話(第1回)
抗生物質の代表選手です。ペニシリン
今回の感染症の小部屋のシリーズでは、感染症の治療薬である抗生物質を取り上げます
一般的には抗生物質と呼ばれていますが、医学の世界では抗菌薬という言い方が一般的です。
その抗菌薬の中で第1回目はペニシリンを取り上げます。
ペニシリンは抗菌薬の代表選手で、皆さんも抗生物質と聞けばまずペニシリンを思い浮かべることでしょう。
ペニシリンは20世紀の10大発見の一つとされています。
そのペニシリンを発見したのはフレミング博士で、後にノーベル賞を受賞しています。
実はこのペニシリンはアオカビと呼ばれるカビの仲間が作り出す成分です。
フレミング博士はこのカビが細菌の増殖を抑える部質を作り出すことを発見しました。
そしてそこからペニシリンと呼ばれる抗生物質を作りだしました。
このペニシリンは細菌が増えるときに大切なペニシリン結合タンパク質と呼ばれるものにくっ付きます。
そのことによって細菌は増えることができなくなってしまいます。
そのため、ペニシリンは強力な殺菌作用を示す抗生物質なのです。
人類が感染症の治療薬として最初に人に使ったお薬もペニシリンなのです。
ただ、ペニシリンはアレルギー反応を起こすことがあり、ひどい時にはペニシリンショックを起こします。
この優れた抗生物質のペニシリンもその後で開発されたさまざな新しい抗生物質に押されて今では少し影が薄くなってきました。
それでもペニシリンと言えば、今でも抗生物質の代表選手であることには変わりはありません。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症