エキノコックス症はどんな感染症ですか
エキノコックス症は包虫と呼ばれるエキノコックス属条虫の幼虫による感染症です。
寄生虫による感染症の一つです。
人間が成虫が感染しているキツネやイヌなどの糞便を触って、その中にいる虫卵が口から感染します。
キツネやイヌの糞便中の虫卵を野ねずみが食べて、その野ねずみをキツネが食べて感染が広がります。
また、キツネやイヌの糞便中の虫卵がついた手で食べ物などと一緒にヒトの口から感染します。
エキノコックス症は感染する寄生虫の種類によって単包性エキノコックス症(単包条虫)と多包性エキノコックス症(多包条虫)があります。
最近では多包性エキノコックス症が増えて問題になっています。
エキノコックス症の発生しやすい北海道
エキノコックス症は北海道で多い病気ですが、元々は北海道に患者がいた訳ではありません。
その起源は北方諸島の島から北海道内に侵入してきたと考えれています。
最初は毛皮とネズミの駆除を目的として連れてきたキツネから感染が広がり、礼文島で100名以上の患者が発生しました。
その後、感染対策を行った結果、一時的に患者の発生は減りましたが、再び患者発生が増加し、根室や釧路など北海道の東部で患者が発生しました。
そして、現在では北海道の西部や中央部でも患者が発生しています。
エキノコックス症はどんな症状がでるか
エキノコックスに感染しても約10年間は何の症状ありません。
その後で、肝臓に病巣を作っていきます。
その影響で、肝臓が肥大したり、腹痛が起こったり、黄疸がでたりします。
検査では肝臓にサボテン状の膿瘍が認められ、肝機能障害などが確認されます。
治療が外科的に肝臓にできた病巣を切除することによって根治します。
予防では感染源となるキツネやイヌに不用意に触らず、触った際には十分な手洗いをして虫卵を飲み込まないように心がけてください。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症