ばい菌の仲間たち 青く染まる菌(グラム陽性菌)(第2回)
化膿したときの原因は。連鎖球菌
グラム陽性菌の第3回は連鎖球菌を取り上げます。
連鎖球菌は正常な人の皮膚や粘膜にいる菌で、人が最も接触する機会の多い菌の一つです。
連鎖球菌の中でも化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)と呼ばれる菌は、読んで字のごとく化膿する病気を起こす代表的な菌です。
この菌は特に寒い時期なると子供の喉や鼻の粘膜の上に生息していて、喉が腫れたり、痛くなったする咽頭炎を起こします。
この菌は、感染症ばかりでなく、感染症が治った後にリウマチ熱や急性糸球体腎炎などの後遺症を起こすことにも注意が必要です。
多くは皮膚がかぶれた後に化膿したりする膿痂疹と呼ばれる病気の原因となります。子供たちの顔や手足に化膿した膿痂疹を見た時はこの化膿性連鎖球菌が原因です。
皮膚などの膿痂疹であれば特に命に関わることはありませんが、この菌が血液の中に入って全身に広がると侵襲性A群連鎖球菌感染症と呼ばれる病気を引き起こします。この病気は「人食いバクテリア」とも呼ばれて、死亡することが多い、とても危険な感染症です。
この化膿連鎖球菌はA群連鎖球菌と呼ばれていますが、もう一つB群連鎖球菌と呼ばれる菌があります。
この菌はStreptococcus agalactiaeという名前がついています。
この菌は特に妊婦さんで注意が必要で、赤ちゃんを産んだ後に感染して、全身に広がり死亡してしてしまうこともあります。
また、生まれた赤ちゃんにも髄膜炎や敗血症などの重篤な感染症を起こす原因にもなります。
ただし、幸いにもこの連鎖球菌にはペニシリンなど多くの抗生物質が有効で、薬の効かない耐性菌も少ないので、早く診断して、きちんと抗生物質を使えば治療することはできます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症