最も小さな生き物。ウイルスによる感染症(第3回)
蚊やダニが運び屋として感染します。フラビウイルス属
今回からRNAウイルスを取り上げます。
RNAウイルスにはプラス鎖RNAウイルスとマイナス鎖RNAウイルスがあります。いま、世界中で大流行しているコロナウイルスもプラス鎖ウイルスの仲間です。
まず、プラス鎖RNAウイルスの1種のフラビウイルス属を取り上げることにします。
フラビウイルス属は60種類以上のウイルスがありますが、人に感染するウイルスとして大切なものは、黄熱ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルスなどです。
この中で、ダニ媒介脳炎ウイルス以外のウイルスはすべて蚊によって人に感染します。
日本脳炎ウイルスは日本など東南アジアの国々で見られますが、黄熱ウイルスとデングウイルスはアジア、アフリカの熱帯から亜熱帯の国々で、セントルイス脳炎ウイルスとウエストナイルウイルスは北米を中心に患者が発生します。
これらのウイルスに感染すると、発熱や筋肉痛などの症状がでて、その後で発疹が見られることもあります。
多くの場合は自然に治って、死亡することは少ない感染症ですが、時に無菌性髄膜炎や脳炎などを起こして重症になったり、後遺症が残ったりすることがあります。
また、ウエストナイルウイルスの集団感染はニューヨークなど近代的な大都市でも発生しています。
これらのウイルス感染症には治療薬はありませんが、黄熱には有効で安全性も高い弱毒ワクチンがあり、日本脳炎とダニ媒介脳炎ウイルスには不活化ワクチンが有効です。
また、これらのウイルスを媒介するネッタイシマカをボウフラの時から駆除して、蚊の繁殖を防ぐことも有効な対策です。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症