子供たちと感染症
インフルエンザの前に流行するRSウイルス感染症
子供たちの感染症も今回で最終回です。
今回はインフルエンザの流行の少し前に流行するRSウイルス感染症を取り上げます。
RSウイルス感染症は世界中のどの地域でも見られる感染症です。
日本では11月~1月の冬の時期に流行します。
同じ冬の時期に流行するインフルエンザの少し前に流行し、不思議なことに同じ時期に流行することは少ないとされています。
RSウイルスは家族内で感染することが多く、特に兄弟がいる家庭では学童期の子供から乳幼児に感染するとされています。
潜伏期は2〜8日で発熱、鼻汁などの風邪の症状が数日間続きます。
その後で咳が出るようになって、その咳がひどくなると肺炎を起こします。
6ケ月以下の小さな子供では特に肺炎を起こす危険性が高くなります。
中でも低出時に体重か少なかった子供や、心臓や肺にもともと病気をもっている子供などに感染すると、ひどい肺炎を起こすことがあります。
発症を予防するためのワクチンはいまだにありませんが、パリビズマブ(Palivizumab)と呼ばれるモノクローナル抗体製剤を注射することで発症を予防することができます。
そのため、ひどい肺炎になりやすい子供ではこのパリビズマブを使って予防するようになっています。
時に子供が入院している病院で、院内感染を起こすことがあるので、RSウイルス感染症の子供は個室で管理して、他の子供に感染させないようにする必要があります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症