今日の新着記事感染症治療に欠かせない抗菌薬(抗生物質)。将来にわたって薬の恩恵を受けるには、薬剤耐性菌を増やさないよう適正使用に努めることが重要だが、日本人は抗菌薬・抗生物質の知識が不十分で、正しく理解している人の割合は欧州連合(EU)諸国に比べかなり低いことが国立国際医療研究センターの意識調査で分かった。2019年10月29日配信共同通信社
お母さん
抗生物質はウイルスには効かないのですか?
抗生物質はウイルスには効きません。
前崎 先生
抗生物質は細菌に有効なお薬です。
風邪などの原因となるウイルスには効きません。
細菌が原因でない感染症の治療には抗生物質は必要ありません。
お母さん
風邪をひいて病院に行くと抗生物質をもらうことがあるのですが?
風邪などの症状があっても細菌感染が合併していることもあります。
前崎 先生
風邪はウイルスの感染症ですが、インフルエンザ以外は診断の方法がありません。
そのため、症状が長く続いたり、高齢者など抵抗力が落ちた患者さんでは、細菌の感染症が合併することもあります。
そのようなときには、適切な検査をしてから、細菌の感染症が疑われた時には抗生物質を使うこともあります。
お母さん
どうして風邪などのウイルス感染症に抗生物質を使うといけないのですか?
不要な抗生物質を使うことによって副作用がでたり、お薬の効かない耐性菌が生まれたりします。
前崎 先生
不必要な抗生物質を使うことによって副作用がでたりすることもあります。
抗生物質は比較的安全なお薬ですが、それでも副作用が起こる可能性があります。
特に、ペニシリンアレルギーなど重症の副作用が起こることもあります。
また、不必要な抗生物質を使うことによって、これまで抗生物質が効いていた細菌にお薬が効かなくなる耐性菌が生み出されてしまいます。
本来、抗生物質が効かないウイルス感染症に抗生物質を使うことは慎まなくてはいけません。
ここがポイント風邪などのウイルス感染症に抗生物質を使うことは百害あって一利なしです。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症