今日の新着記事新型コロナウイルス感染症の治療薬候補として期待されていた気管支ぜんそく治療薬で吸入ステロイドの「シクレソニド(商品名オルベスコ)」について、国立国際医療研究センターは23日、軽症患者を対象とした臨床研究で有効性は示されなかったと発表した。結果からは肺炎を悪化させる恐れがみられ、使用は推奨できないとしている。2020年12月23日配信 共同通信社
サラリーマン
シクレソニド(商品名オルベスコ)はどんなお薬ですか?
気管支喘息の治療に使う吸入薬です。
前崎 先生
オルベスコは気管支喘息の患者さんの治療に使う吸入薬の一つです。
吸入ステロイド薬の1種で、気管支喘息の患者さんの気道の炎症を抑える効果があります。
新型コロナウイルス感染症もウイルスによる炎症が病気の主体なので、効果があるかもと期待されていました。。
サラリーマン
効果がないとどうやって判断されたのですか?
お薬を使わなかった人と比べて差がなかったということです。
前崎 先生
一般的に薬の効果を調べる時には、同じような症状の患者さんに本当の薬とプラセボと呼ばれる偽の薬を投与します。
今回の研究は、偽の薬は使っていませんが、軽症の患者さんにオルベスコと使った人と、使わなかった人の効果を比べています。
最終的には薬を使っても使わなくても違いがなかったとの結論になりました。
サラリーマン
薬を使うと悪化するとはどんなことですか?
ステロイドは免疫を抑える働きがあるので、ウイルスがより増える危険性があります。
前崎 先生
ステロイドは免疫を抑える働きがあるので、感染の原因微生物がより増えやすくなる可能性があります。
ウイルスがより多く増殖すれば、炎症はさらにひどくなって肺炎が悪化する可能性もあります。
オルベスコはウイルスの増殖を抑える薬ではないため、そのような危険性もあるかと思われます。
ここがポイント炎症を抑える気管支喘息の吸入薬の一つのオルベスコは新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待されましたが、結果的には効果がなく、逆に肺炎を悪化させる可能性もあることが証明されました。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症