こんなところにも感染症が(第3回)
感染症が少ない臓器。それは心臓です
今回の小部屋では心臓の感染症を取り上げます。
実は、心臓は人にとって最も大切な臓器の一つですが、感染症から見ると病気を起こすことが少ない臓器でもあります。
その心臓の感染症として最も多いのは感染症心内膜炎です。
この病気は心臓の内側を覆っている内膜に細菌などが感染します。
健康な心臓の内膜は細菌などに対して抵抗性があるため、感染を起こすことはありませんが、
障害を受けた内膜では細菌などの感染を起こすことがあります。
障害の原因としては心臓弁膜症や先天性心疾患などが多く、これらの病気があるときに感染性心内膜炎が起きます。
その他には、心臓の手術をして、人工弁などがある患者さんも危険です。
この障害のある内膜に血液中の細菌が付着して、疣贅と呼ばれる塊を作ります。
症状としては、38℃前後の発熱が長く続くことがあります。
血液培養検査をすると、血液中から感染している細菌を見つけることができます。
その他には、心臓の超音波検査をしてこの疣贅をみつけることができます。
治療は感染している細菌を見つけて、その菌に有効な抗生物質を投与します。
しかし、この治療だけでは障害のある内膜は残ってしまいますので、また菌が感染してしまいます。
そのため、手術をして、この障害なる内膜を取り除いてしまわないと根本的な治療にはなりません。
この感染性心内膜炎以外にも、心筋炎や心膜炎などの感染症が心臓に起こりますが、
これらの感染症もとても珍しい病気です。
心臓は感染症が少ない臓器の代表なのです。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症