RSウイルスとはどんなウイルスか
RSウイルスは世界中に存在し、小さな子供の呼吸器感染症を起こすウイルスです。
満2歳の誕生日までにほぼ100%の子供が感染します。
感染すると気管支炎や肺炎などの呼吸器感染症を起こします。
ウイルスにはグループAとBの2つのタイプがあります。
日本では毎年冬に流行が起こり、感染した子供の1~3%が入院が必要な重症例になります。
特に未熟児や肺や心臓に先天性の病気を持っている子供では重症となりやすいとされています。
また、慢性の呼吸器疾患を有する高齢者では重症の肺炎を起こし、死亡することもあります。
大人におけるRSウイルスワクチンの臨床試験の結果
大人(とくに高齢者)を対象にRSウイルスワクチンの臨床試験が海外で行われました。
60歳以上の成人を対象に世界17ヶ国で、約25,000人にワクチンと偽薬(プラセボ)を投与しました。
ワクチンを投与して半年後に呼吸器感染症を発症した人はワクチンの投与によって80%以上少なくなりました。
また、副反応については注射部位の痛みや、全身倦怠感などがありましたが、いづれも軽微なものでした。
この臨床試験の結果から60歳以上の高齢者ではRSウイルスワクチンが有効であることが示されました。
この結果をもとに日本でも高齢者に対するRSウイルスワクチンが承認されました。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症