忘れてはいけない感染症。寄生虫の病気
イノシシやカニから肺の寄生虫の病気が。
肺に病気を起こす寄生虫は肺吸虫です。
ヒトが肺吸虫の幼虫であるメタセルカリアを食べて感染します。
日本で多いのはウエステルマン肺吸虫と宮崎肺吸虫です。
もともと、肺吸虫の成虫はイヌ科やネコ科の野生動物の肺の中に寄生しています。
それが、カワニナなどの湖に住む巻貝に移り住み、その貝を食べたモクズガニやサワガニに移っていきます。
その後、サワガニが大好物のイノシシに食べられますが、
イノシシのお腹の中では住みにくいので、腸から外にでて筋肉の中にメタセルカリアと呼ばれる幼虫になってじっとしています。
ヒトはサワガニやイノシシの肉を食べて感染します。
肺吸虫は西日本に多く、特に九州地方に多いと言われています。
その理由はこれらの地方では、イノシシの肉を生で食べる習慣があるためです。
以前、私が担当した患者さんも宮崎県出身の方で、その地方ではお祝い事では必ずイノシシの生肉を食べるとのことでした。
また、サワガニから感染することもあります。
小さなカニで、から揚げにして食べれば感染することありませんが、ときに魚釣りの餌として使われます。
先日の患者さんも霞ヶ浦で魚釣りをするときに、このサワガニを餌として使っていました。
その時に手に付いたメタセルカリアが口から体の中に入って感染したと思われます。
肺吸虫は肺に感染する寄生虫ですから、レントゲンなどで異常が指摘されます。
でも、肺吸虫を知らないお医者さんもたくさんいますので、いろんな検査をしても原因がわからないことが多くあります。
もし、イノシシの肉や、サワガニを食べた時には、お医者さんにそのことを伝えてください。
それが、診断にとても大事なことになります。

埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症