新型コロナウイルス感染症。基本的なことを抑えましょう(第5回)
風邪とは全然違います。コロナの症状
新型コロナウイルス感染症の基本的なことの解説の5回目は新型コロナウイルスの症状についてお話しします。
これまでに、400名以上の入院患者さんの診療をしてきましたが、新型コロナウイルスの症状は風邪とは全く違います。
昨年の春に流行が始まった当初は、感染しても多くの人が風邪みたいな症状で、そのうち自然に治ってしまう病気だと思われていました。
確かに、感染しても全く症状がない患者さんや、本当に風邪と同じように、喉が痛くなったり、熱が出たり、咳が出たりして治ってしまうこともありますが、
治らなくて、症状が悪化した時は、風邪とは全く違う病気になってしまいます。
中等症以上の患者さんは、いわゆる肺炎の症状が強くなってきます。
熱も38℃以上の高熱が何日も続き、激しい咳が出るようになってきます。
そのころには、レントゲンやCT検査で肺炎の影が見られるようになります。
血液中の酸素濃度がどんどん低くなってきて、息切れや、呼吸困難などの症状が現れてきます。
このように肺炎まで進むと、症状は数時間単位で悪くなってきます。
普通の空気では酸素不足になってしまい、鼻のチューブから酸素を吸わなければいけない状況になります。
それでも、十分な酸素がいきわたらなくなれば、人工呼吸器を使って、高濃度の酸素を肺に送り込まなければいけません。
このように、新型コロナウイルスに感染すると風邪のような症状で治ってしまう患者さんから、人工呼吸器が必要となる患者さんまで、極端に違う症状を認める病気なのです。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症