感染症カルタ(ア行)アメーバ赤痢

感染症カルタ(ア行)の2回目はアメーバ赤痢を取り上げます。

赤痢と聞くと皆さんはすぐにインドなどの熱帯地域の病気で、お腹が痛くなったり、下痢をしたりする病気を思い浮かべるでしょう。

この赤痢は赤痢菌と呼ばれる細菌による感染症ですが、今回取りあげる赤痢アメーバは原虫と呼ばれる微生物です。

この赤痢アメーバも感染すると赤痢と同じような症状がですため、このような名前が付きました。

この赤痢アメーバはアメーバの卵のようなオーシストと呼ばれるものは、食べ物や飲み水と一緒に体の中に入ってきます。

多くの患者さんは発展途上国などに仕事や旅行で行って、現地で感染しています。

日本で普通の生活をしている人にはこの赤痢アメーバは感染することはありません。

ただし。日本に住んでいる人の中でも、男性同性愛者にはこの赤痢アメーバが多く感染します。

これは、性行為に伴う感染で、赤痢アメーバが感染した男性同性愛者の多くが、同じ感染症であるエイズの原因であるHIV(ヒト免疫不全症候群ウイルス)にも感染していることが多くあります。

赤痢アメーバの潜伏期間は数週間から数か月と長いため、開発途上国で感染しても日本に帰ってから症状が出ることが多くあります。

食べ物や水と一緒に体の中に入って来た赤痢アメーバは大腸に炎症を起こします。

すると、お腹が痛くなったり、下痢をしたり、時には便に血が混じることがあります。

そこで、病院に行って大腸の内視鏡検査をすると、大腸に炎症が認められ、その部分を採ってきて顕微鏡で調べると赤痢アメーバが発見されます。

右:赤痢アメーバ患者の大腸内視鏡写真(大腸の粘膜に炎症が起こります)

左:その部分の顕微鏡写真(赤く見える丸いものが赤痢アメーバ)

出典:国立感染症研究所ホームページ

(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/315-amoeba-intro.html)

また、そのまま放っておくと、赤痢アメーバは血液の中に入って、肝臓で大きな膿の塊を作ってしまします。

肝臓にできた赤痢アメーバの膿の塊

出典:国立感染症研究所ホームページ

(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/315-amoeba-intro.html)

この赤痢アメーバにはメトロニダゾールと呼ばれる抗生物質が有効です。

ただ、肝臓に大きな膿の塊ができた時は、この薬を使いながら手術をすることもあります。

また、全く症状がなくて、便の検査から赤痢アメーバが発見された時には、パルモマイシンと呼ばれる抗生物質を飲んで、腸の中にいる赤痢アメーバを殺してしまう必要があります。

私たち感染症の専門医が赤痢アメーバを見た時には必ずHIVなど他の性行為による感染症がないかどうか検査をしています。

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