ア行の4回目はインフレンザ菌について解説します。
実は前回の感染症カルタではインフルエンザを取り上げました。
同じインフルエンザと言う名前が付いていますが、前回取り上げたものはウイルスで、今回のインフルエンザ菌は細菌です。
なぜ、インフルエンザ菌と言う名前が付いているかと言うと、インフルエンザウイルスが発見されるまで、インフルエンザはこの菌によって起こると思われていました。
ウイルスは細菌に比べるとかなり小さな生物です。
そのため、以前の顕微鏡では見ることができませんでした。
それに比べて細菌は大きいので、昔の顕微鏡でも見ることができました。
そのため、今でいうインフルエンザウイルスが感染した患者さんの鼻水や喀痰を顕微鏡で見るとこの菌が見えたので、インフルエンザ菌と言う名前が付けられました。
その後で、インフルエンザはウイルスの感染症ということがわかったのですが、名前はそのままになってしまいました。
このインフルエンザ菌は菌の周りに莢膜と呼ばれるものを持っている菌と、持っていない菌があります。
莢膜をもっている菌は髄膜炎など命に関わる重い病気を起こしやすく、莢膜をもっていない菌は中耳炎などの病気を起こします。
莢膜にはa~fの6つの型があります。
この莢膜をもつインフルエンザ菌は小さな子供に髄膜炎を起こし、時には命に関わることもあります。
そこで、この6つの型の莢膜のうちでb型の莢膜を持つインフルエンザ菌に対するワクチンが開発され、今では小さな子供に接種されています。
このワクチンはHib(ヒブ)ワクチンと言われ、赤ちゃんのうちに接種することによって、インフルエンザ菌による髄膜炎が激減しました。
特に小さな子供たちの命を奪ってきた感染症だけに、このワクチンのもたらした恩恵は図り知れないものがあります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症