ウエストナイル熱はウエストナイルウイルスによるウイルス感染症です。
ウエストナイルウイルスは1937 年に初めて、ウガンダのウエストナイル地方で発熱した女性から発見されたウイルスです。
このウエストナイルウイルスが蚊を介して人に感染します。
日本ではいまだ感染例は認められていませんが、これまで報告のなかったヨーロッパやアメリカなど西半球に1990 年代中頃から多くの患者が発生しています。
ウエストナイルウイルスは日本で流行している日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルスの仲間でよく似ています。
ウエストナイルウイルスに感染すると3~15日間の潜伏期間の後で、熱が出たり、節々が痛くなったり、身体が怠くなったりする症状が出てきます。
ただし、感染しても80%の人はなんの症状もでない不顕性感染で終わってしまいます。
しかし、稀に重症となることがあり、その場合は痙攣や意識がなくなるなど神経症状が出てきます。
死亡率は3~15%と報告されており、重症化すると怖い感染症です。
現時点では残念ながら治療薬はありません。また、日本脳炎のようにワクチンで予防することもできません。
蚊に刺されないようにして、感染を防ぐしか方法はありません。
アメリカではニューヨークなど東海岸の大都市でも患者が発生しているので、注意が必要です。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症