新型コロナウイルス感染症には、これまで感染防止のためにワクチンが接種されてきました。日本でも3回目のブースター接種が行われており、高齢者など基礎疾患を持つヒトには4回目の接種が開始されています。
しかし、これまでに使われているワクチンは新たな変異株であるオミクロン株では、感染を予防する効果が低くなるころが判っています。
そのため、オミクロン株にも有効なワクチンの開発が進められてきました。
今回は新型コロナウイルスのワクチンについて解説します。
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mRNAワクチン
日本で多くの人が接種したファイザーとモデルナのワクチンはmRNAワクチンと呼ばれるものです。
これまでのワクチンは生ワクチンあるいは不活化ワクチンと呼ばれるもので、mRNAワクチンが人に投与されるのは今回の新型コロナウイルスワクチンが初めてです。
mRNA(メッセンジャーRNA)は分解酵素で容易に破壊されるため、脂質ナノ粒子と呼ばれる極小のカプセルに包んで投与します。
そのことによって人の細胞内に取り込まれやすくなり、筋肉細胞や樹状細胞内でmRNAをもとにタンパク質が作られます。
このタンパク質の一部がリンパ球に提示されて免疫反応が起こる仕組みです。
新型コロナウイルスがヒトに感染する際には、ウイルスの表面にあるスパイクタンパク質が重要な働きをします。
ファイザーとモデルナのワクチンには、このスパイクタンパク質を生成するmRNA遺伝子が組み込まれています。
なぜオミクロン株では効果が低いのか
オミクロン株ではそれまでのデルタ株などの変異株に比べてスパイクタンパクの構造が大きく変化しています。
そのため、これまでのmRNAワクチン遺伝子では、その変化したスパイクタンパクを十分に作り出すことができません。
このことが原因でオミクロン株に対しては感染予防の効果が低くなってしまいました。
今回、モデルナ社ではこのオミクロン株のスパイクタンパクを作るmRNAを組み込んだワクチンを開発しました。
臨床試験の結果ではオミクロン株にも十分効果があることが確認されました。
今後はこれまでのデルタ株までのスパイクタンパクmRNAとオミクロン株のスパイクタンパクmRNAの2つが組み込まれたワクチンが使われることになると思います。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症