長崎医療センター(長崎県大村市)は15日、2剤の抗生物質に耐性を持つタイプのアシネトバクターが入院患者10人から検出されたと発表した。1人が死亡したが、感染が死亡につながった可能性は低いとしている。2019年5月16日 (木)配信共同通信社
Q. アシネトバクターとはどんな菌ですか?
A. 私たちの身の回りにいる菌で、グラム陰性桿菌の仲間です。
アシネトバクターは私たちの身の回りにいる菌です。家の中の床の上などの環境ばかりでなくて、野菜など食べ物の表面にもいます。病院の中など特殊な場所でなく、私たちの身近にいる菌です。
Q. 多剤耐性菌とはどんな菌ですか?
A. 感染症の治療に使う抗生物質の多くが効かなくなった菌です。
私たちの身の回りにいるアシネトバクターは、たくさんの種類の抗生物質が効きますが、多剤耐性菌になると、そんな抗生物質が効かなくなってしまします。薬剤感受性試験という検査をすることによって、どの抗生物質がその菌に効くかどうかを調べることができますが、多剤耐性菌ではその検査で多くの種類の抗生物質が効かない結果になります。
Q. どうして多剤耐性菌ができるのですか?
A. 病院の中ではたくさんの抗生物質が使われているからです。
アシネトバクターは私たちの身の回りにいますが、それらの菌は多剤耐性菌ではありません。しかし、病院では患者さんの治療のためにたくさんの抗生物質を使うので、多剤耐性菌になってしまいます。
Q. 多剤耐性菌はどうやって広がっていくのですか?
A. 看護師さんやお医者さんの手を介して広がったり、時には検査や治療に使う道具を介して広がっていきます。
そのように病院の中でできた多剤耐性菌は、看護師さんやお医者さんの手に付いて、その手で別の患者さんを触ることによって広がっていきます。また、ときには検査や治療に使う道具に付いた菌が、次の患者さんの検査や治療をするときに広がっていきます。
Q. 多剤耐性菌が広がるとどうなるのですか?
A. 有効な治療薬が少なくなり、治療が難しくなります。
このような多剤耐性菌は健康な人に感染することはほとんどありませんが、他の重い病気で入院している患者さんに感染すると治療が難しくなります。本来であれば、有効な抗生物質があるはずですが、多剤耐性菌では効かなくなるため治療がさらに難しくなります。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症