今回は新型コロナウイルス感染症のもう一つの治療薬である抗体療法について、3つ目の新たな治療薬が使用可能となりかもしれません。
抗体療法は抗ウイルス薬と同じく、軽症から中等症の患者さんが重症となることを防ぐ効果が期待されています。
しかし、抗体が認識する抗原であるスパイクタンパクが変異株では大きく変化するため、変異株では効果が低くなることが懸念されています
ここでは、これまでに患者さんに使用することできる2つの抗体治療薬の解説と、新しい抗体治療薬について現時点で解っている効果を解説します。
ロナプリーブ
ロナプリーブは2つのモノクローナル抗体であるカシリビマブ/イムデビマブからできた抗体治療薬です。
新型コロナウイルスのスパイクタンパクに対する中和抗体として抗ウイルス作用を示します。
発症してからあまり時間が経っていない軽症から中等症の患者さんに投与すると重症化を防ぐ効果があります。
また、感染している家族と同居している家族に投与した時、濃厚接触者である家族での発症を防ぐ効果があることも判っています。
使い方は2つの抗体がそれぞれ600㎎入っている点滴を1回投与します。
しかし、残念ながら現在流行しているオミクロン株ではその効果が低くなることが懸念されています。
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ゼビュディ
この薬はSARS(重症急性呼吸器症候群)に感染した患者から得られた抗体を基にしたモノクローナル抗体であるソトロビマブによる中和抗体薬です。
ロナプリーブと異なり、スパイクタンパク以外の部分に対する抗体となります。
ロナプリーブと同じように発症してからあまり時間が経っていない軽症から中等症の患者さんに投与すると重症化を防ぐ効果があります。
オミクロン株にもロナプリーブ以上の効果があるとされています。
しかし、これも残念なことにオミクロン株の亜種であるBA.2系統の変異株では効果が減弱することが懸念されています。
使い方は本剤500㎎を1回点滴静注します。
AZD7442
この薬剤は2つのモノクローナル抗体であるチキサゲビマブとシルガビマブからできた薬剤です。
この薬剤を投与した人の77%で感染を防ぐことができ、またその効果が6ケ月以上つづくことが判りました。
さらに軽症から中等症の患者さんい投与すると50%に人で重症化を防ぐことができて、88%の死亡率を減らすことが証明されました。
海外ではすでに新型コロナウイルスの患者さんに使用されていますが、近い将来日本でも使用可能になると思われます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症