薬剤耐性菌(AMR)とは
薬剤耐性菌とは多くの種類の抗生物質が効かなくなった菌のことです。
これまで、人類はペニシリンをはじめ、さまざまな抗生物質を感染症の治療に使ってきました。
そのおかげで多くの感染症は治療することができるようになり、たくさんの命が救われてきました。
しかし、ヒトと同じ生き物である細菌は進化を続け、抗生物質が効かない子孫を生み出してきました。
それが薬剤耐性菌(AMR)と呼ばれるものです。
このままでは薬剤耐性菌によって多くの人が亡くなります
このような薬剤耐性菌の問題を重視してWHO(世界保健機構)はある推定を公表しました。
それによると人類がこの薬剤耐性菌に対して何の方策も取らないと、2050年には世界中で、10.000.000人の人が亡くなると推定されました。
この数字は、がんや糖尿病など今では多くの人を苦しめている病気で亡くなる人の数をはるかに上回る数字です。
そのため、WHOは2015年にAMRグローバルアクションプランを公表して世界中の国々にこれに基づいて行動をするように呼びかけました。
それを受けてG7の主要閣僚が2016年の伊勢志摩サミットとこのAMRに対する共同声明を発表しました。
日本の製薬会社がこの薬剤耐性菌有効な薬剤を世界に供給します
今回、日本の製薬会社である塩野義製薬で開発されたセフィデロコルと呼ばれる抗生物質が世界中に供給されます。
この薬剤はカルバペネム系と呼ばれる強力な抗生物質に耐性を示す薬剤耐性菌に効果があります。
お薬の値段が高いので、開発途上国には世界中のさまざまな支援を受けて安価で提供されます。
これによって、WHOが推定した薬剤耐性菌によって亡くなる人の数が少なくなることが期待されます。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症