今回は大きく後れを取った日本のワクチン開発
今回の新型コロナウイルス感染で日本のワクチン開発は世界に大きく後れを取ってしました。
現在、日本で使われている新型コロナウイルスのワクチンはファイザーやモデルナなどすべて海外の製薬企業のものです。
承認された他のワクチンもすべて海外のもので、残念ながら日本の製薬企業で開発されたワクチンはいまだにありません。
実はこのことは2009年の新型インフルエンザ(H1N1)のパンデミックの時も同じで、当時は輸入ワクチンと呼ばれ、日本製のワクチンは一つもありませんでした。
この時の教訓が今回は残念ながら生かされていませんでした。
ワクチンの開発には莫大なお金が必要です。
ワクチンの開発のは莫大なお金が必要です。
もともと日本の感染症研究は、歴史的にはペスト菌を発見した北里柴三郎博士や梅毒研究の野口英世博士など、世界的にも顕著な研究成果を上げていました。
しかし、公衆衛生が整うと、感染症への関心が徐々に低下してきました。
また、製薬企業も利益になる高血圧や糖尿病などの生活習慣病の新薬の開発に力を注ぎ、利益の少ないワクチンの開発や生産には興味を示しませんでした。
今回の新型コロナウイルスワクチンの開発でも、例えばモデルナは平時である2013 年から米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)から2500万ドルの支援を受けています。
さらに同国保健省の生物医学先端研究開発局(BARDA)から2016年に800万ドル以上(最大1.25億ドル)の研究資金を得ています。
緊急時である今回の新型コロナウイルス感染症ワクチン開発では、約9億5500万ドルの資金を追加で得て開発を進めてきました。
今回も日本でワクチンが開発されなかったことを受けて、政府は日本医療研究開発機構(AMED)内に先進的研究開発戦略センター「SCARDA(スカーダ)」と呼ばれる組織を作り、ワクチンの研究・開発を資金で後押しすることになりました。
日本でも現在さまざまなワクチンが開発中です
海外には後れをとりましたが、現在日本のアカデミアや製薬会社でもさまざまな新しいワクチン開発されています。
その中にはmRNAワクチンと異なる組み換えタンパク質のワクチンや、従来の不活化ワクチンなども開発中です。
日本の塩野義製薬が開発中の組み換えタンパク質のワクチンが近々患者さんに使用できることが期待されています。
埼玉医科大学 感染症科・感染制御科 教授
医学博士
長崎大学医学部を卒業後、呼吸器内科、感染症内科で臨床および研究に従事。現在は埼玉医科大学病院で感染症の診療と院内感染対策を主な業務とし、学生や研修医の教育も行う。日本感染症学会の理事や厚生労働省の審議会などの役職も務める。
専門は内科学、感染症学、感染制御学、呼吸器感染症